ドルビーアトモスの空間オーディオでサウンドを格上げする
全身を包み込むような臨場感の3Dサラウンドサウンドで、ミュージックは次の次元へ。モノラルからステレオへの変遷を彷彿とさせる空間オーディオの登場で、ミュージック制作の在り方が大きく変わります。リスナーにどの音をどの方向から聴かせるか、アーティスト自身がさらに舵取りできるようになります。また、革新的なオーディオ体験が生まれることで、ミュージック制作の在り方だけでなく、Apple Musicでのミュージックの聴き方についても一変していきます。以下も参照してください。
- ドルビーアトモスの空間オーディオとは
- 空間オーディオの意義
- 収益機会の創出
- 3Dサウンドで活躍を遂げるアーティストの実例
- イマーシブオーディオの実現に向けたビジョン
- ドルビーアトモス対応トラックのApple Musicへのデリバリ
ドルビーアトモスの空間オーディオとは
ドルビーアトモスの空間オーディオは、没入感ある3次元のオーディオを実現する高度なサウンド技術です。サウンド要素を3D空間に配置できるため、四方八方からミュージックに包まれるような体験を創り出すことができます。
ドルビーアトモスは10年以上前からある、サラウンド音声フォーマットの一つで、チャンネルベース方式ではなく、オブジェクトベース方式を採用した技術として知られています。オブジェクトベースとは、音の素材一つひとつを意味する「オブジェクト」の配置をアーティスト自身が決められる方式で、リスナーを取り囲むように3次元方向で指定できます。
空間オーディオは、Appleの複数のイマーシブオーディオ再生技術を総称する言葉で、ドルビーアトモスもこれに含まれます。
空間オーディオの意義
ミュージックをイマーシブオーディオの形でリスナーに届けることで、新たな境地が開け、新しいリスナーを呼び込めます。イマーシブオーディオをミュージックに採用することで得られる経時的なメリットをいくつかご紹介します。
- 表現の幅が広がる。サウンドに文字通り新しい次元を追求することで、これまで以上に表情豊かで革新的な音響表現が実現します。
- リスナーへのアピール力が向上する。没入感あるリアルな音響体験をリスナーに提供することで、ミュージックのプレゼンスを高めることができます。
- 作品の将来性を高められる。空間オーディオを採用することで、音楽業界が進展しても時代に対応する作品を提供できます。
- さまざまなプラットフォームに対応できる。空間オーディオは多種多様なプラットフォームに対応しており、たとえばAirPodsやBeats、HomePod、Mac、iPhone、Apple Vision Pro、Apple TVのほか、ホームシアターやメルセデス・ベンツなどの自動車でも楽しめます。
収益機会の創出
空間オーディオ対応のミュージックを制作するには多大な投資が必要となります。こうした労に報いるため、Apple Musicでは空間オーディオ対応のミュージックに対し、空間オーディオ非対応のミュージックと比較して最大10%上乗せした金額を、音源に対するロイヤルティとしてお支払いしています。*
これは、空間オーディオのミキシングに投資した時間やリソースに見合うだけの報酬をアーティストは受け取るべきだという考えに基づいたものです。ミキシングやレンダリングにLogic Proを使用する独立系アーティストであっても、レーベルと契約を交わし世界全体で1000以上あるドルビーアトモス・ミュージックスタジオのいずれかでミキシングを行うアーティストであっても、空間オーディオのフォーマットでミュージックをApple Musicにデリバリした場合は、上乗せされたロイヤルティ料率で報酬を受け取る権利を有します。
3Dサウンドで活躍を遂げるアーティストの実例
ジャンルやアーティストとしての経験値を問わず、さまざまなアーティストが空間オーディオフォーマットを使ったミュージック制作に乗り出しており、対応曲目を増やしています。作品の質を高めてリスナーを魅了する新たな手段として、アーティストがどのように空間オーディオを活用しているかご紹介します。
FINNEAS氏は、映画「バービー」のサウンドトラックであるシングル曲「What Was I Made For?」の制作時にドルビーアトモスを活用しました。次元を加えてボーカルを際立たせることで、心を揺さぶるような没入感ある曲に仕上げています。FINNEASのスタジオについてはこちらをご覧ください。
アーティスト兼プロデューサーとして名を馳せているナイル・ロジャース氏は、古くから最新鋭のテクノロジーを活用し、時代を先取るミュージック制作を行ってきました。同氏は早くから、空間オーディオに音楽の未来を見出しており、こうしたことから、自身の楽曲すべてのリミックスに空間オーディオを使っています。インスピレーションを得られるナイル・ロジャース氏のストーリーについてはこちらをご覧ください。
最新の機能やリリースについては、Apple Musicで空間オーディオのカテゴリページで確認できます。ここでは、空間オーディオ対応曲のニューリリースやおすすめアーティスト、ジャンル別プレイリストなどが表示されます。さまざまなアーティストのファンが好むヒット曲にすぐたどり着ける構成となっておりますので、ぜひ目で一度ご確認ください。
イマーシブオーディオの実現に向けたビジョン
空間オーディオのフォーマットでコンテンツを制作する際には、企画から実行までの手順を詳細に決めていくとよいでしょう。イマーシブオーディオの制作に向けた構想の立て方や、構想を実現するツールの見つけ方についてコツをご紹介します。
- 最初に構想を立てます。空間オーディオの企画を開始する際には、まずどのようなサウンドを作るかを考えます。
- 手順にドルビーアトモスの構想を落とし込んでいきます。これは、新規でミュージックを制作する場合も、既存の楽曲をリマスタリングして3Dサウンドに作り替える場合も同様です。
- 3次元で考えていきます。水平方向、垂直方向、奥行きを意識しながら、トラックの空間的要素について計画を立てましょう。
- Logic Proなど、ドルビーアトモスのミュージックを制作できるソフトウェアを使用します。Mac用Logic Proのドルビーアトモスプラグインについて概要を読み、ミュージック制作への活用方法をご確認ください。
ドルビーアトモス対応トラックのApple Musicへのデリバリ
ドルビーアトモスを使ったミキシングを初めて行う際には、ドルビーアトモスの経験が豊富なミキシングエンジニアに作業を依頼するのがおすすめです。品質のよいミキシングが得られることでしょう。お住まいの地域にあるドルビーアトモスミュージックスタジオの一覧については、ドルビーのWebサイトをご覧ください。
ドルビーアトモス対応トラックをApple Musicにデリバリする際には、ガイドラインに従うようにしてください。こうすることで、コンテンツが確実に承認され、Apple Musicで配信できるようになります。なお、ステレオのミックスファイルから生成されたドルビーアトモスのオーディオファイルは、空間オーディオとしてレーベルや配信パートナーにデリバリできません。ご注意ください。具体的な規定は以下の通りです。
- ドルビーアトモスのトラックは、マルチトラックから作成されているか、マルチトラックから作成されたステムである必要があります。
- リリースされたステレオ楽曲をアップミックスしたトラックは使用できません。
- リリースされたステレオ楽曲からステムを抽出(デミキシング)したトラックは使用できません。
- サウンドフィールドに配置され、アンビエンスやリバーブが追加されたステレオミックスでのみ構成されるドルビーアトモスのトラックは使用できません。
- ドルビーアトモスのファイルはコンフォームを行い、同一プロジェクトの参照用ステレオファイルと同期させる必要があります。
空間オーディオの処理は、新規のミュージックにも、以前にデリバリしたミュージックにも適用できます。デリバリは、ステレオとドルビーアトモスの両方のフォーマットで行うことを強く推奨します。ドルビーアトモスオーディオをデリバリする場合は、Apple Musicにドルビーアトモスをデリバリする要件を満たした配信パートナーかエンコーディングハウスに依頼する必要があります。ドルビーアトモスのデリバリ要件の全容については、「Appleビデオとオーディオのアセットガイド」をご覧ください。
ドルビーアトモスバッジの表示
ドルビーアトモス対応のミュージックが正常にデリバリされると、Apple Musicでそのミュージックに対しドルビーアトモスのバッジが表示されるようになります。1つのアルバムに含まれる全トラックがドルビーアトモス対応でデリバリされている場合は、Apple Musicにおいてアルバムレベルでバッジが表示されます。アルバムの一部にドルビーアトモス対応のミュージックが含まれている場合は、トラックレベルでバッジが表示されます。
バッジの表示と先行リリース
アルバムレベルでのバッジは、すべてのトラックがドルビーアトモス対応で、かつすべて空間オーディオ配信開始日が過ぎている場合に表示されます。Apple Musicパートナーは空間オーディオの配信開始日に変更を加えることができます。
*空間オーディオ対応コンテンツのストリーミングとは、空間オーディオで聴くことが可能なコンテンツのストリーミングを意味します。再生時に使用されたデバイスが空間オーディオに対応しているか否かは問いません。